2017年8月20日 主日礼拝
「食卓から落ちるパン屑」 イザヤ書56章1節、6〜8節
マタイによる福音書15章21〜28節
ゲネサレトを立ち、ティルスとシドンの地方へと旅立たれた主イエス一行の話であるが、そこは、外国人や違う神々を信じる人々の住むところであった。ここには、そんなところにも福音が届けられることを願い、弟子たちにもそれらの地方にむかうようにと願う主の姿があった。
カナン人の女性がイエスに「主よ、ダビデの子よ、」と叫びかけたことが記されている。主に対し心から信頼し尊敬するときに呼びかけるその言葉を、その女性がどこでどのように知ったのかは不明であるが、カナン人とユダヤ人との違いを超越した方として、主イエスを仰ぎ見ている女性の姿がここに描き出されている。
これは、今日のわたしたちの教会に対して、このような人物にどのように向き合っていくのかと、問われているのかもしれない。弟子たちは、この女性を追い払ってくれるように主に願い、イエスご自身もこの女性に答えることをされなかったことから、この女性への対応を、当時の教会が直面している課題として見ることができる。
神の御手からこぼれ落ちている人々にも福音を届けようとされている主の姿勢であるのに、このカナンの女性に対する冷たさは、何故なのだろうか。主の中にも偏見と見下しの気持ちがあるのではと疑ってしまいそうになる。
救われる者としてのユダヤ人と、救われることのない異邦人との違いなのだろうか。神の選びの有無によって、救いの可否が分けられるのだろうか。
「選び」の中に入れられていない自分自身を卑下し、あるいは、「選び」に入れられているばかりに、「この重荷をなぜ負わねばならないのか」と不満を持ってしまう、わたしたちは、そんな葛藤の中に身を置いてしまう。しかし、わたしたちは、神の特別な御心による選びの中に据えられている。主と共に歩み始めたにも関わらず、時に御名から無視され、時に救いに与っていないのではないかと疑い、時に主への信頼が揺らいでしまうことがある。しかし、主に救いを願い求め続けるならば、必ずや主はその願いに応えてくださる。失敗も憂いも、選びに与っていないことも、たとえそうであっても、そこにも神の選びがある。
カナンの女性が、そのことを認め受け入れたときに、次なる世界が開かれている。そして、神の恵みのひとかけらさえあれば、彼女は希望の内に生きることができることを示した。神に受け入れられたカナンの女性が教会を変える。