２０１７年６月１１日　三位一体の主日礼拝
　「祝福された生命に向けて」　ヨハネによる福音書２章1～１１節

ヨハネによる福音書の記者ヨハネは、普通の人であったので、主の十字架は彼にとっては全くの挫折であったに違いない。しかし、キリストの復活を経験し、神が罪と死の力に勝利されたということを、神によって経験させられた衝撃は、この地上に隕石が落下衝突する以上のものであったのかもしれない。

わたしたちは、ヨハネの受けた衝撃を心に留めながら、今日の聖書箇所を読んでいかなければならない。

ヨハネは、このカナの婚姻の記事をある意味を持って書いている。婚礼という普遍的な出来事も、復活の光に照らして見てみると、そこには大きな意味が隠されていることに気づく。人間にとって、十字架という絶望に見える出来事が、復活によって喜びの出来事に変えられる。カナの婚礼に主イエスが参加されたが、ヨハネは、そのイエスを、自分たちと共に宣教活動にあったイエスとして描いていると同時に、十字架の贖いを成し復活を遂げられたイエス・キリストとしても、ここに描き出している。

それは、イエスと母マリアとの応対においても見て取れる。実際にそこにいるのはヨハネとともにいたイエスなのであるが、記事では、神がお遣わしになった救い主イエスがマリアの訴えを聞いている場面として、無意識に記されている。ぶどう酒が切れてしまったという人にとって厳しい状況を示し、人生を楽しみなさいという神の御旨を成就させるために、生ける救い主イエスがそこにおられ、人間の生命の喜びがイエス・キリストによって与えられるということが示されている。

水が良質のワインに変わったということが奇跡の本質ではなく、良いぶどう酒をわたしたちに与えることを通して、復活の喜びを先取りして、イエスご自身をわたしたちに渡しておられるということが奇跡の本質である。

過去と現在と未来とが、キリスト・イエスにおいて一つになっている。時間を分けて区切っている扉が、キリストにおいて取り去られ、一つになるという奇跡が示されている。イエス・キリストとの信仰の交わりにおいて、すべての者の上に、奇跡が与えられている。天と地のすべてのものの創造主である神の右に座しておられるイエス・キリストにおける、同時性が示されている。これが、信じる者に起こってくることが奇跡である。

このカナの婚姻の記事によって、過去も現在もそして未来も、イエス・キリストにおいて一つになるということによって、わたしたちの生きるこの世界には、大いなる意味が存在するという事実が示されている。