2017年3月12日　四旬節第二主日礼拝
「キリストの愛」　コリントの信徒への手紙１３章1～１３節

　罪と死の世界は、人間が世に登場する以前から存在し、しかも、神の創造された世界とは別の並行した存在ではなくて、神の世界に複雑に絡みついて存在している。
　ヒューマニズムではなく、神との関りにおいて人間をとらえている宗教改革者は、神ご自身がご自身の大切な対話の存在として人間を作られたので、人間は神との関連において、尊厳あるものととらえている。
　神の愛と人間どうしの愛は、区別が難しいほど似てはいるが、神の愛アガペーと人間の愛エロスとは厳格に区別されている。神は人間を愛してくださっているので、一人ひとりにエロスの愛を贈り、アガペーの愛でそれを保護してくださっている。聖書は、素晴らしいエロスの愛であっても、罪と死の世界においては、それが枯れ果ててしまうことがあると説く。しかし、神の愛アガペーは廃れることがない。言い換えれば、エロスの愛がアガペーの愛によって保護されていれば、決して廃れることがない。
　愛の観点からわたしたちの信仰を見る時、信仰は相対化されていることに気づく。山を動かすほどの信仰があったとしても、神の愛アガペーによって保護されていなければ、その信仰は空しいものとなってしまう。
　エロスの愛もわたしたちの信仰も神から贈られた「賜物」である。その賜物を生かして事を成し遂げた多くの人々をわたしたちは思い出すことができる。聖書はこれを良いこととして認めてはいるが、愛と比べたら、それらは無に等しいと説いている。
　素晴らしい功績を打ち立てることで、その本人が望むと望まないにかかわらず、他者に対する壁を作ってしまう。しかし、アガペーの愛はそのような壁を決して作らない。
　アガペーの愛は、イエス・キリストの十字架の中に形をとっている。イエス・キリストの十字架によって形取られたアガペーの愛は、その時々によって変化してしまうエロスの愛とは、まったく異なるものである。わたしたちは、エロスの愛が、アガペーの愛によって保護されて、人を高めているのを知ることができる。
　神の愛が、わたしたちの中に、力をもって働いていてくださっている。神の愛は、永遠の生命そのもの。神の現実がわたしたちの中に、まさに働いておられる。
　